子供が性暴力の被害者になることについて考える
いきなり重い話題です。
朝日新聞が、2019年12月から断続的に、私がこれを書いている2021年6月現在まで、4部計24回にわたって子供への性暴力について連載をしました。
第一部は、あらゆる形式の性暴力の実例など、第二部は家庭内における性暴力、第3部はSNSなどを通じて被害に陥る事例、そして第4部は立場や関係性を利用した性暴力の実例を取材し、専門家や研究者の見解とともに記事がまとめてあります。この第4部は、たとえば教師、保育士、医者、スポーツクラブの指導者などが、その立場を利用して性暴力を振うケースを取り上げてあります。教師として子供を守る立場にある私には、とても身近で深刻なテーマの特集です。
保育士や教師が加害者となる
性暴力というと力尽くで性行為に至ることを想像するかもしれませんが、違うんですよ。とても巧みに被害者に近づくことがあります。保育所に通う子が、保育士に「パンツの中に積み木が入っているから触って」と言われて性器を触らされたとか舐めさせられたという事例が載っていました。その子は精神が不安定になり、小学校では保健室登校が続いているとのことです。母親もストレスでウツになり自殺や離婚を考え、父親もまだ小学校低学年の娘とどう接していいかわからなくなったとあります。たとえば、’高い高い’もできなくなった、と。たった一人の保育士のエゴでこれだけの人が一生回復できない被害にあうのです。
記事: 保育士、体触らせ「内緒だよ」 約束守り語らなかった娘
小学校高学年以上になると、恋愛と思い込まされることもあります。中学3年の時に信頼していた部活の副顧問かつ学年主任の教師にキスなどのわいせつ行為をされ、高校1年で自殺した事例も出ていました。大切に育ててきて、人を信用する優しいお嬢さんに育ったのに、そんなことがあったと想像しただけでも、そのお母さんのことがもう痛ましくて胸が潰れそうでした。
幼児だと、もちろん被害に遭っている認識すらありません。でも、成人して何かのはずみにあれは性暴力だったんだと気づくと、トラウマに襲われ、日常生活が大きく妨げらることにもなるという事例が記事になっています。
記事: 小1で受けた教師からの性暴力 過食・嘔吐が止まらない
男児も犠牲者となることはあり、人生に深い傷跡を残します。
記事: 当直のたび、施設職員の部屋で 10歳まで続いた性暴力
朝日新聞が「性暴力」という用語で通しているのは、子供に対する”いたずら”行為が、どんなに深刻な後遺症を残すかを考えさせるためでしょう。性暴力というのは、殴って骨折させたとか失明させたという暴力以上の被害を残すのです。
性暴力による後遺症の深刻さ
”わいせつ行為”によって、どのような心理的被害を受けるのか、それが一生付き纏い、何十年もしてからトラウマに陥ることなど、実は私も深く知りませんでした。この連載のおかげで、少し学ぶことができました。内容が内容だけに取材も簡単ではなかったでしょう。
被害者の声を集め、偏ることなく記事にまとめ、また、大学教授や精神科医などの研究者の意見も取り入れた連載構成に学ぶところが多く、性暴力取材チームに私の感想などを二通のメイルで伝えました。こんな内容です。
「第24回の記事も、心を込めて拝読しました。被害者のことや研究者の視点を含む学びの多い記事をありがとうございます。
石田郁子さんの勇気ある、社会全体の利益を見据えた行動を、心から応援します。今すぐにでも飛んでいって私の気持ちを伝えたいくらいです。
前回のメイルでもお伝えしましたが、オーストラリアでは教員資格を取る時に厳しく学ばされたChild Protection(幼児・児童・生徒の保護)の科目では、暴力には育児放棄や家庭内暴力を含む5つの種類があることを学びます。携帯電話で男性の上半身裸の写真を見せることも性的虐待とみなされ、自分の車に生徒を乗せることも禁止です。私にとって、子供とは守ってやるべき対象ですので、このようなことを学ばなければ、裏心を持って子供に近づく人間がいるなど、思いもよらないことでした。記事にもあったように、社会全体で、未成年への虐待・性暴力の基準を共有することは大事ですね。
日本の教育関係省庁・機関が、教師による性暴力によって子供及びその人が成人になった時にどれだけ苦しむか、それが社会全体にどれだけ影響するかを深く認識し、一刻も早く加害防止の対策を実施するために、メディアとしてこれからも声を上げ続けてくださることを願います。」
そうしたら、2021年度日本記者クラブ賞を受賞した朝日新聞編集委員の大久保真紀さんから、直接返信をいただいて、すっごく感動しました。
朝日新聞取材班から取材の依頼
この話題について少しでも多くの人に注目していただきたくて、ずいぶん前置きが長くなりましたが、さっき書いたようなメイルを送ったことがきっかけで、子供に対する性暴力を連載している取材班からZoomによる取材依頼をいただき、6月中旬に1時間ほど記者さんとお話ししました。
私、モンテッソーリ教育に関することだったら、即答できることも多いのですが、それ以外はちょっと自信がありません。質問を受けてから考えるのに時間がかかるし、考えをまとめるのもうまくありません。それで、事前に質問項目をメイルしていただき、私なりに調べて準備しました。小学部や中学部の教師の同僚にも質問しておきました。
そのZoom取材について、次回 詳しく書きますね。